日本ではあまり知られれていない作曲家、モーリス・ドラージュ(Maurice Delage)(1879-1961)。20世紀はじめのパリで、ドビュッシー、ラヴェル、ストラヴィンスキー等とともに活動していた作曲家。ストラヴィンスキーの著作『私の人生の年代記ーストラヴィンスキー自伝』の中で、
“私は彼の音楽的感性の繊細さや精神を高く評価していた。そのことは、あいにく数は少ないにせよ、彼の作品が証明している。さらに、彼はあらゆる種類の事柄にひじょうに長けていて、彼と一緒にいると大いに気晴らしになった。”
と紹介されていて気になったので作品を聴いてみたら、これは確かに素晴らしい音楽!
『4つのインドの詩 』(Quatre poèmes hindous)(1912)は、ソプラノとアンサンブル(フルート、ピッコロ、クラリネット、バスクラリネット、ハープ、ヴァイオリンx2、ヴィオラ、チェロ)の編成。同時期のストラヴィンスキーの作品『3つの日本の抒情詩』やラヴェルの『マラルメによる3つの詩』もほぼ同じような編成で書かれている。これはもちろん偶然ではなく、そもそもストラヴィンスキーはドラージュから日本の俳句を教えられたことで『3つの日本の抒情詩』を作曲し、ラヴェルはストラヴィンスキーの『3つの日本の抒情詩』に触発されて『マラルメによる3つの詩』を作曲したというのだ。そして、この3つの作品は同じコンサートで初演されている。編成については、シェーンベルク『月に憑かれたピエロ』(1911)の影響だ。
ドラージュ は藤田嗣治と親交があり、こちらもほぼ同じ編成(ソプラノと室内アンサンブル)のための『Sept haï-kaïs(7つの俳諧)』(1925)のスコアは、藤田が装丁を手懸けている。
藤田嗣治による『Sept haï-kaïs(7つの俳諧)』のスコア