全体的な響きの印象は、いわゆる20世紀のヨーロッパの現代音楽の系統だったと思います。ただ。その中にありながらも、1位に選ばれた大胡恵さんの作品「北之椿 ─ 親和性によるグラデイション第2番 ─」は、新しい響きへの挑戦を感じる印象的な作品で(もちろん調性やモードに回帰する事無く)、エトヴェシュの評にもある通り、一番輝きのある響きであったと思います。
この作曲コンクールは、一人の審査員が審査するという事でも少し特殊なコンクール。たしか、武満徹氏が “当選しても落選しても、一人の作曲家に選ばれた、選ばれなかった、ということだけだから、応募する若い作曲家にとっても一番すっきりした方法。”として採用したと語っていたように思います。(確かに、スティーヴ・ライヒが審査員のときと今回を比べると、全然違うコンクールのようです。)審査員の選び方も、1997-1999年度は武満徹氏が指名した3名が、2000-2002年度はその3名がそれぞれ次の3名を推薦・・・、と当初はテレフォンショッキング形式で行うように聞いて、これまた誰が選ばれるのかサプライズがありそうで楽しみにしていました。現在は、オペラシティ財団のアドヴァイザリー・コミッティ数名と直前の3年間の審査員による推薦で選ばれているようですので、サプライズはあまりなさそうですかね。