岡本太郎は、第二次大戦後の日本において、芸術分野のみならず様々な分野で活動を展開しました。多面体とも称される岡本の活躍をめぐって、1996年に没して後、研究が活発化しています。
しかしながら、岡本の作品に込められた意味を理解するための研究は、まだ端緒についたばかりです。というのも、岡本の思想的背景の解明が、不十分であるからです。
岡本の思想的背景としては、これまで、戦前に留学(1930~40)したパリ大学ソルボンヌ校で師事した民族学者マルセル・モース(1872~1950)や哲学者アレクサンドル・コジェーヴ(1902~68)からの影響、秘密結社アセファルにて行動を共にした思想家ジョルジュ・バタイユ(1897~1962)からの影響などが言及されてきました。
しかしながら、岡本の多岐にわたる創作活動に関し、モース、コジェーヴ、そしてバタイユらの著作からでは説明のつかない部分が少なからずあり、戦後、岡本が修得した思想や知識についても考察する必要があると考えられます。
ところで、岡本は、1950年代初めころよりシャーマニズムへの関心を示し始めます。川崎市岡本太郎美術館は岡本旧蔵書の欧文書籍を391冊所蔵していますが、その中でも、ルーマニア出身の宗教学者ミルチャ・エリアーデの著作『シャーマニズム-古代的エクスタシーの技法』(1951)が、岡本の興味をシャーマニズムへと向かわせた最も注目すべき書籍であると考えられます。
本展覧会では、岡本が作品に込めた意図を解明する手がかりとして、岡本旧蔵のエリアーデの著作等に着目し、1940年代から晩年までの岡本作品の意図解明を試みます。
場所:川崎市岡本太郎美術館(川崎市・生田緑地)
期間:2013年4月20日(土)〜2013年7月7日(日)