1994年の暮れ、秋山邦晴と武満徹のたまたまの雑談の中から、二人で映画音楽の歴史を語り明かして、一冊の本にしようというプランが生まれた。しかし1996年、奇しくも同じ年に両氏が相次いで急逝され、企ては夢に終わった。本書はその意図を酌んで、秋山邦晴が1995年にNHK・FMで十回にわたって放送した「映画音楽の100年史」の原稿を中心に、生前に残していた武満徹との放送と劇場でのトーク・ショーの対談を収録してまとめ、二人によって果たされなかった夢のかけがえとするものである。
著者の秋山邦晴氏は詩人であり音楽評論家。あの「実験公房」の設立メンバーであり、なによりも武満徹を見いだしたり、いち早く海外の作曲家を紹介したり、戦後の音楽やアートの世界ではなくてはならない存在でした(1996年死去)。