美の侵犯―蕪村×西洋美術

北川健次

西洋美術の名作と、日本の代表的な俳人の与謝蕪村の俳句に、驚く程の共通したイメージがある事を見つけ出し、それらの絵と俳句を対にして語りながら、私たちの誰もが知らなかった興味深い話を織り交ぜた美しい文章で、しかもわかりやすくグイグイと引きこんでいってしまいます。まさに、著者のコラージュ作品に見られるような想像力の交錯と、そして、著者の過去の著作にあるような、ミステリーや紀行文を同時に読んでいるような醍醐味もあり、久しぶりに「読書の快楽」というものを存分に味わう事が出来ました。

そして改めて北川健次氏が、滝口修造や澁澤龍彦らに続く、信頼出来る「美の書き手」であると改めて感じました。

この本『美の侵犯―蕪村×西洋美術』は、美術と蕪村の俳句を通して、美というものが、実に危うく深いものだという事を静かに語りかけてくれて、私の西洋美術への見方もずいぶんと変わったように思います。そして、この本を読むまでまったく知らなかったのだが、与謝蕪村の俳句が実に幅広い内容で、不気味なものや、エロチックなものまでも含まれていて、フィクションの面白さをたくさん持っている人である事を知る事が出来ました。

【目次】
レオナルド・ダ・ヴィンチ『モナ・リザ(ラ・ジョコンダ)』
フランシスコ・デ・ゴヤ『砂に埋もれる犬』
ジョゼフ・コーネル『鳥たちの天空航法』
アルブレヒト・デューラー『メレンコリア1』
ハンス・ベルメール『ウニカ』
アントニ・ガウディ『サグラダ・ファミリア』
フランチェスコ・グアルディ『灰色のラグーナ』
アルノルト・ベックリン『死の島』
オディロン・ルドン『聖アントワーヌの誘惑』第三集9「…私は孤独のうちに沈んだ。私はうしろの木に住んでいたのだ」
マルセル・デュシャン『彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも』
〔他〕

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