《酒瓶に秘められた物語たち》
19〜20世紀にかけて、芸術家たちに愛飲されてきた「緑の妖精」——ニガヨモギからつくられるアブサンを、図版もたっぷりと解説。
アブサンは約100年前に製造が禁止された「伝説」の酒として、これまで開高健など限られた好事家の想像力と好奇心をくすぐってきた。
本書は、その「禁じられた酒」について、歴史的・社会的・科学的に「図解」してゆく本邦初の本格的な文化史。19世紀末ヨーロッパに漂うデカダンスな雰囲気の象徴としてアブサンを紹介してゆくその語り口は、じつに痛快だ。
まず本書前半においては、マネ、ドガ、ロートレック、ゴッホ、ゴーギャン、ピカソ、ボードレール、ヴェルレーヌ、ランボー、ワイルド、ジャリ……日本人に馴染み深い芸術家とアブサンとのエピソードが数珠つなぎに繰り広げられてゆく。なによりも興味深いのは、酒にまつわる巨匠たちの「失敗談」が数多く物語られている点である。そして後半においては、アブサンの起源、医療や政治や戦争との関わりが繙かれる。それはすなわち、にがくて飲めないハーブが人びとを虜にした真実に迫る、酒瓶に秘められた物語たち!
19世紀〜20世紀にかけて多くの芸術家に愛飲された「緑の妖精」──ニガヨモギからつくられる蒸留酒アブサンについて、図版もたっぷりと解説。本文パートカラー。
[目次]
はじめに
一章 とあるアブサン殺人
二章 マネ、ボードレール、そしてアブサンの時代
三章 アブサンと詩人たち ——ヴェルレーヌ、ランボー、ワイルド、ダウスン
四章 ロンドンにアブサンをもたらしたドガ
五章 モンマルトルからマルケサス諸島へ
――ロートレック、ファン・ゴッホ、モンティセリ、そしてゴーギャン
六章 ジャリとピカソ ――アブサン色にかすんだ美術
七章 古代から現代へ ――アブサンの起源をたどる
八章 アブサンをめぐる医療史
九章 アブサンと政治
十章 アブサンと戦争
十一章 禁止されてから
十二章 アブサンはいま ――よみがえる「緑の妖精」
補遺 近年のアブサンについての研究
謝辞/訳者あとがき