ストラヴィンスキーの代表作の一つ、バレエ・カンタータ『結婚』。初演は1923年にバレエ・リュスにより上演。
ロシアの婚礼の歌や儀式、民間伝承から着想を得た本作を、いわゆるクラシックの演奏家ではなく、ロシアの民族音楽アンサンブル、ポクロフスキー・アンサンブルが、詳細な研究とフィールドワークに基づいて演奏した異色の音源。しかし、どの音源よりも生命が宿っている。ピョートル・キレーエフスキーが19世紀前半に収集した民謡集を元に構想され、旋律は民族音楽を収集したものではなく、ストラヴィンスキーが独自に作曲したものであるが、やはり、所々に民謡が散りばめられているようだ。ポクロフスキーはフィールドワークによってそれらを集め『結婚』の前後にそれらの演奏を収録。
また『結婚』そのものについても独自のスタイルを採用している。
『結婚』は最終的にピアノ4台、打楽器、混声合唱、独唱というユニークな編成になっているが、ストラヴィンスキーは、それ以前には、自動ピアノ(ピアノラ)、電気ハーモニウム、打楽器アンサンブル、2台のツィンバロムといった編成で構想していた。自動ピアノと実際の演奏のアンサンブルが難しいということで断念したが、ストラヴィンスキーは客観的で機械的な演奏を望んでいたのだ。そこで、ポクロフスキーはこのアルバムにおいてはピアノパートをコンピュータによる自動演奏を使用している。コンピュータによるピアノの演奏と、独特な歌唱力のアンサンブルが、なんとも不思議な音楽を奏でている。
【収録曲】
1. Play, Skomoroshek(ロシア・トラディショナル)
2. River(ロシア・トラディショナル)
3. Trumpet(ロシア・トラディショナル)
4-7. バレエ・カンタータ「結婚」(1923年版)(イーゴリ・ストラヴィンスキー)
8.Cosmas And Demian(ロシア・トラディショナル)
9.The Drinker(ロシア・トラディショナル)
10.Green Forest(ロシア・トラディショナル)
11.God Bless, Jesus(ロシア・トラディショナル)
12.My White Peas(ロシア・トラディショナル)
13.Steambath(ロシア・トラディショナル)
14.Berry(ロシア・トラディショナル)
15.Black Beaver(ロシア・トラディショナル)
16.In The House(ロシア・トラディショナル)
17.Bunny With Short Legs(ロシア・トラディショナル)
18.The Bed(ロシア・トラディショナル)
19.Birch Tree(ロシア・トラディショナル)
【演奏】
ポクロフスキー・アンサンブル - Pokrovsky Ensemble
ドミートリー・ポクロフスキー - Dmitry Pokrovsky (指揮)