武満徹の“ノヴェンバー・ステップス”の演奏で知られる琵琶師、鶴田錦史(1911-1995)。多くの人が彼女が”女性”であると知った時とても驚いたに違いない。何故なら、鶴田錦史は男装した琵琶師であったから。
大正、昭和、平成の激しく移り行く時代とともに、繁栄から戦後衰退した琵琶楽に翻弄された鶴田錦史の生涯を綴った「さわり」(著 佐宮圭)。彼女の天才琵琶師としての幼少期の活躍から、容姿による女流琵琶師としての挫折。戦後、琵琶師を辞め、女性である事を辞めナイトクラブの経営者として生き、そして琵琶界に復活を遂げる。武満徹との出会いと、共に新しい音楽世界を切り開く様は才能ある音楽家同士であるがゆえのエピソード。こんな人生があるのかというような一冊。