チック・コリア&リターン・トゥ・フォーエヴァーの第1作は、カメモのジャケットでおなじみの人気盤。本作はそれと同じ72年にロンドンで録音したセカンド作。話題満載のデビュー作の陰に隠れ、本作はやや地味な印象を受けるかもしれないけれど、内容的には見劣りしない。というか、フローラ・プリムのヴォーカルを大々的にフィーチャーしていることもあって、こちらのほうがよりポップで親しみやすい。ジョー・ファレル、スタンリー・クラーク、アイアート・モレイラ、フローラ・プリムを擁するオリジナル・メンバーによる録音はデビュー作と本作の2枚だけで、これら2作は姉妹作といっていい。リターン・トゥ・フォーエヴァーはその後、ギターを加えたロック寄りのエレクトリック路線へと突き進むことになるが、これら初期の2作ではスタート時ならではのヒューマンなユートピア・サウンドを楽しめる。チックの曲作りのうまさも際立っていて、特に「アランフェス協奏曲」をイントロに用いた<6>は最大の人気曲、もちろん本作の目玉曲だ。(市川正二)